欧州特許庁の早期審査制度のご紹介
2014年9月9日作成
欧州特許庁は、電気通信及びソフトウェアの技術分野において特に審査に時間がかかる傾向にあり(※1)、特許が付与されるまで約4〜5年かかることもあります。また、特許出願が欧州特許庁に係属中の場合、3年目以降の出願維持年金を毎年支払う必要があるため、審査に時間がかかるほど費用負担が増大します。そこで、欧州特許出願の早期手続きプログラム(PACE: Programme for accelerated prosecution for European patent applications)を利用することにより、欧州特許庁における審査期間を短縮させることができます。
欧州特許出願の出願人であれば、誰でもPACEの申請が可能です。PACEを申請するには、PACEの適用を希望する旨を記載した定型の書面を提出する必要があります(※2,※3)。申請の理由を説明する必要はありません(※1)。また、欧州特許庁は、PACEの申請において追加的な費用の支払いを要求していません(※1)。PACEには、早期調査及び早期審査があり、出願人がこれらの一方又は両方を選択することができます(※4)。PACEを申請したことは公表されません(※8)。PACEの申請が認められるか否かは欧州特許庁の裁量によりますが(※5)、通常は認められるケースが多いようです(※6)。
(1)早期調査(※5,※8)
I. 優先権主張をしていないEP出願の場合、自動的に早期調査の対象となり、出願日から6月以内に拡張欧州サーチレポートが発行されます。このため、早期調査の申請は不要です。
II. 優先権主張を伴うEP出願の場合、出願時に早期調査を請求することにより、可及的速やかに拡張欧州サーチレポートが発行されます。ただし、早期調査は、請求の範囲、明細書、必要な図面及び翻訳文が提出された後に行われます。
(2)早期審査
早期審査はいつでも申請することが可能ですが、早期審査を効果的なものとするために、以下の時点において早期審査を申請することが推奨されています(※5)。
a.出願と同時に審査請求を行う場合であれば、出願時。
b.拡張欧州サーチレポートの受領後、サーチオピニオンに対する応答書の提出時。
また、PCT経由の欧州特許出願の場合にも、原則として、早期審査はいつでも申請することが可能ですが、以下の時点において早期審査を申請することが推奨されています(※5)。
c.欧州広域段階への移行時。
d.国際調査報告、国際予備審査報告又は補充国際調査報告(EPC規則161(1))に対する応答書の提出時。
早期審査が移行時に行われた場合には、方式審査や、拡張欧州サーチレポートの作成及び実体審査が早期審査の対象となります。また、EPOは、早期審査の申請の提出時又は拡張欧州サーチレポート等に対する応答書の提出時のいずれか遅い方から3月以内に最初の審査報告書を発行するように努めます(※5)。ただし、出願人が応答期間の延長を行った場合や、拡張欧州サーチレポート又は審査報告書等に記載された全ての指摘事項に出願人が応答しなかった場合には、早期審査は中止されます(※5)。
(3)参考URL:
(※1)Accelerated prosecution of European patent application (ボールト・ウェイド・テナント法律事務所のホームページ,検索日2014年7月17日,URL: http://www.boult.com/resources/bulletins/archive/details.aspx?id=34)
(※2)Programme for accelerated prosecution of European patent applications / PACE (著者:Tomas Dolezel,検索日:2014年7月17日, URL:http://www.osbip.org/pace.pdf)
(※3)PACE request to the European Patent Office(欧州特許庁のホームページ,検索日:2014年7月17日,
URL:http://documents.epo.org/projects/babylon/eponet.nsf/0/232788473F016
48FC125737E004ED2EC/$File/1005_form_12_07.pdf)
(※4)Guideline for Examination in the European Patent Office Part E ? Chapter VII-8(欧州特許庁の審査ガイドライン,検索日:2014年7月17日,URL:http://documents.epo.org/projects/babylon/eponet.nsf/0/6c9c0ec38c2d48df
c1257a21004930f4/$FILE/guidelines_for_examination_2013_part_e_en.pdf)
(※5) Notice from the European Patent Office dated 4 May 2010 concerning the programme for accelerated prosecution of European patent applications ? “PACE”(欧州特許庁のホームページ,検索日:2014年7月17日,URL:URL:http://archive.epo.org/epo/pubs/oj010/06_10/06_3520.pdf)
(※6)ACCELERATED PROSECUTION AT THE EPO & UK-IPO (JA・KEMP特許事務所作成,検索日:2014年7月17日,URL: http://www.jakemp.com/uploads/files/topical-briefings/Accelerated_Prosecution_27_11_13.pdf)
(※7)ヨーロッパ特許弁理士インタビュー(編集者:tokugikon,検索日:2014年7月17日,URL:http://www.tokugikon.jp/gikonshi/245kiko2j.pdf)
(※8)Notice from the President of the President of the European Patent Office dated 1 October 2001 concerning the programme for accelerated prosecution of European patent applications ? “PACE”(欧州特許庁のホームページ,検索日:2014年9月9日,URL:http://archive.epo.org/epo/pubs/oj001/10_01/10_4591.pdf)